天なびコラム

第8602話

2024年05月16日

事前予約の是非

先日、今年の富士登山に予約制度が導入されることが発表になりました。
4つある登山ルートの内、山梨県側の吉田ルートにて実施される予定で、通行料2000円を事前精算できるというものです。
吉田ルートは1日4000人という登山者数上限を掲げており、予約枠はその内3000人として、予約のない当日枠も1000人分確保する方針だそうです。

最近の富士登山は、登山者の急増、特に軽装備で入山しようとする危険な外国人の増加が問題視されていました。
それに加え、今年はオーバーツーリズムも全国各地で問題になっています。
登山者数の上限設置と予約制度により、これらへの抑止が期待されています。

しかし、誰でも好きなことを発信できるSNSの時代らしいと言いますか、いいことだけではない様々な意見が飛び交っています。
静岡県側の残り3つのルートにかえって殺到しそう、2000円では安過ぎて抑制にはならなさそう、転売ヤーが飛びつきそうなどなど…。

その中に、我々お天気ナビゲータの運営側が放ってはおけない問題がありました。
事前予約完了後のキャンセルは、いつ手続きをしても2000円が返金されることはないそうです。
つまり、当日が登山できないほどの悪天候であった場合でも2000円は返ってこないということになります。
(執筆時点での予約サイトには、悪天候による対応は明記がなくキャンセルによる返金不可のみが書かれています。)
2000円が返ってこないのを理由に、どんな天候でも登山を強行する人たちも出かねないのです。
また、2000円がそんなに惜しいならと、事前予約を使わず天気のいい日に当日枠を求めて大混雑、なんてこともありそうなのがまた恐ろしくもあります。

お天気ナビゲータでは、登山に役立つ予報を提供している登山ナビというコーナーがあり、ありがたいことに多くの方にご利用いただいています。
登山ナビを普段からご利用の方なら、悪天候での登山の危険性を理解されていると思います。
せっかく予約した富士登山の日が悪天候だと誰でもガッカリはするでしょうが、決して強行することはないようにしていただきたいです。

富士登山の予約制度は今年が初めてですので、運用してどれだけの効果を生むかはまだ分かりません。
適切に利用されて富士登山のトラブルを最小限に抑えてくれることを切に願います。


執筆者:そふぃー