天なびコラム

第8599話

2024年05月13日

スマホ地図を見ない旅

比較的好天に恵まれたGW後半。外に出ないと勿体ないと思い、突拍子もない旅の企画を思いつきました。それは、神奈川県藤沢市の江ノ島から自宅のある横浜市都筑区まで全長40kmの道程を徒歩で帰る旅。ただ歩いて帰っても面白くないので、地図を見ずに自宅を目指す「スマホ地図を見ない」縛りプレイの旅をしてきました。

江ノ島では海にも旬の生しらす丼にも目もくれず、駅について滞在時間10分で自宅へ向けて出発。まず北の藤沢駅か東の鎌倉駅を目指す選択でしたが、ぼんやりと日本地図を思い浮かべると、北ルートが最短距離ではないかと考え、藤沢駅に進路をとりました。

藤沢駅を超えて少し北へ進むとまもなく横浜市戸塚区に入ります。そしてここから延々と広がる丘陵地帯の始まりです。数十mの標高差を上がっては下り上がっては下り...。私は大阪出身なので、神奈川に移り住むまで「横浜みなとみらい」のような海と街のイメージでしたが、実際には市内の大半が丘陵や台地に覆われています。

TVなどで伝えられる横浜の気温は、横浜地方気象台のあるみなとみらい周辺の気温を表していますが、少し内陸の丘陵地帯ではこれより気温が1〜2℃低くなることも多く、冬は同じ横浜市でも、みなとみらい周辺だと雨、丘陵地帯だと積雪ぐらいの差が出ることもあります。

話を戻します。丘陵地帯をうねうねと歩いていると方向感覚が分からなくなってきます。そんな時に役に立つのが自分の影の位置。例えばお昼の12時だと影の伸びる方向が北になります。これが役に立つことに気づき、時計の針と影の位置を見ながら、ひたすら北を目指し丘陵地帯を歩くこと約8時間。。。

ようやく自宅のある横浜市都筑区の港北ニュータウンに突入。多摩丘陵の上に作られた港北ニュータウンは、晴れていると富士山や東京都心、スカイツリーが見渡せる眺めの良さがお気に入り…なのですが、この日に限っては、ここまで40km踏破したダメージ負いの私に立ちふさがるラスボスとなりました。。。

後からスマホで記録していた道のりを見返すと、江ノ島⇒自宅まで思いのほかまっすぐに歩けていましたが、やはり道中右往左往と遠回りしていたこともしばしば。地図の無い時代の旅がどれだけ大変だったか、ほんの少しだけ思いを馳せることが出来ました。

知らない土地も最短距離で導いてくれるスマホの地図は本当に便利です。その恩恵に感謝しつつも、この日スマホの地図を見なかったことで、本来は出会うことのなかった幾つもの素敵な場所や風景に出会うことが出来ました。
もし急ぐ旅でなければ、たまには地図に頼らない旅もいかがでしょうか。身近な場所でも新たな発見があるかもしれませんよ。

執筆者:そら